人気ブログランキング | 話題のタグを見る

藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
皇国のモダニズムと北欧デザイン
皇国のモダニズムと北欧デザイン_d0039955_15583118.jpg
現在、全国巡回中の「北欧モダン デザイン&クラフト」展のカタログに、原稿を執筆しています。「皇国のモダニストを照らした光」というタイトル──。北欧デザインが日本のデザイナーたちにどう受容されてきたかを探った論考です。

1941年(昭和16年)10月9日〜18日、商工省工芸指導所が、戦時統制下の生活用品のあり方を示すために、日米開戦の2か月前の東京・日本橋高島屋で「国民生活用品展覧会」を開催します。この展覧会は工芸指導所の官僚デザイナーたちが、国家主義の下で理想のモダニズムを実現させようと意図したものでした。商業主義によって粗悪な商品が出回ることを懸念していたエリートデザイナーや建築家たちは、戦時統制をモダニズムの哲学に則った理想のものづくりを実現し、シンプリシティの美学を啓蒙する好機と考えたようです。バウハウス留学から帰り、当時工芸指導所の意匠係長を務めていた建築家、山脇巖はこう語っています。

「現在の日本を弁(わきま)えぬ、贅沢な生活を押さえ、標準以下の不健全な国民生活を一定の線まで持ち上げていく方針に対しては、私たち技術者はもちろんのこと、誰でもが大いに期待しているところでもあります。(略)この事変が根本から考え方を変えさせ、将来の国民生活に使用する真の家具、皿、小鉢を実際に考えさせるようになりました。」(『工芸ニュース』1941年 10巻 6号)

展覧会会場には、以下のような「生活用品工業に対する指標」が掲げられました。 1)実用簡素なるものであること。 2)堅牢であり合理的なる機能を有するものであること。 3)原材料の適正使用を図りたるものであること。 4)価格は原則として公定価格に準拠し、可及的廉価なるものであること。

この展覧会の目指した理想は、戦局の悪化と敗戦によって実現することはありませんでした。しかし、工芸指導所の中心メンバーたちは、戦後、民主主義という新しい国家体制のもとで、モダニズムの理想を実現しようと努力します。彼らの変わり身の速さは、モダニズムは政治的なイデオロギーを超えた存在であることの証明とも言えます。

で、そこに現れたのが北欧デザインだ、という話です。アメリカの商業主義へのアンティテーゼとして北欧デザインは、戦後のデザインエリートたちの道標となっていきます。剣持勇や小池新二、柳宗理が『工芸ニュース』などに寄稿した文章からそのことを読み解きます。詳しくはカタログで読んでみて下さい。8頁分、5600字の原稿です。
皇国のモダニズムと北欧デザイン_d0039955_1559026.jpg
カタログは一般書店では取り扱っておりません。購入御希望の方は、アプトインターナショナルへメールでお申し込み下さい。apt@apt.co.jp
もしくは宇都宮美術館ミュージアム・ショップ
028-643-8855(直通) へお問い合わせください。http://u-moa.jp/jp/shop_restrant/index.html

価格3300円(税込み)。全312頁。執筆者は島崎信、織田憲嗣、井上雅義、土田貴宏、橋本優子、藤崎圭一郎。

********
「北欧モダン デザイン&クラフト」展の日程は以下の通りです。
長崎県美術館
4月4日(水)〜5月17日(木)
宇都宮美術館
7月1日(日)〜9月2日(日)
京都市美術館
9月15日(土)〜10月21日(日)
東京オペラシティアートギャラリー
11月3日(土)〜2008年1月14日(月・祝)

********
展覧会はまだ見ていません。東京展まで待ちきれないので、僕は宇都宮に行こうと思っています。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-04-23 16:01
<< チョコレート展とSENSEWARE展 キッチンタイマー集めてます >>


S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
以前の記事
カテゴリ
その他のジャンル
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2019 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。