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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
神奈川工科大学KAIT工房へ
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石上純也氏設計の神奈川工科大学KAIT工房へ行ってきました。本厚木駅からタクシーで2,690円かかりました。
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美しい建物です。2,000平方メートルの空間に、柱の数が305本。そのうち42本が垂直荷重を、263本が水平荷重を支えます。平たい柱もあり、その向きはさまざま。配置もランダムです。植物や柱や家具の不規則なレイアウトは、石上氏が昨秋発表した作品「リトルガーデン」を彷彿させます。
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KAIT工房は、学生が自由に利用できる工房です。授業で使う施設ではなく、学生たちが自主的に、機械加工、陶芸、鋳造、木工、基板加工などに取り組むための施設。機器の使い方を指導してくれるスタッフもいますし、ひとつのスペースの中に多種の機材が揃っているので、横断的なものづくりを実践できる。非常にうらやましい施設です。

異世界に迷い込んだ感じがしました。J.G.バラードの小説『結晶世界』を思い出しました。といっても完全に結晶化された世界ではありません。使い込まれた木工用机や、ものづくりの現場感たっぷりの各種工具、むき出しの空調機、背面からコードが伸びるパソコン、それに作業服姿のスタッフの方もいらっしゃる。が、そうした人工物や人間や植物が、結晶の森の中に閉じこめられて、結晶化を待っている……その過程の中にいるような感覚があるのです。
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「現実離れ」が21世紀の今の美しさへ見事に昇華している一方で、大丈夫かな?と心配にさせられる面もありました。昨日(4/10)の厚木は最高気温10℃くらいでかなり寒い一日でした。いっしょに行った建築家は、館内の真ん中あたりの鉄骨の柱を触って、この冷たさはアリエナイと言っていました。外の気温がそのまま室内に伝わってしまうのです。快晴の夏の日には、柱が305本のヒーターになるかもしれません。スタッフにうかがってみると、晴れた日にはすでに室内の温度が30℃を超えた日があるとか。夏は50℃くらいになるじゃないかと真剣に心配していました。

全面ガラスの内と外がつながった空間ですが、四方に人の出入り口があるだけで、外気を取り入れるための開口部がなく、しかし光だけが入ってくる。風と光と熱の流れが設計されていないのです。鉢植えの中には、すでに葉が茶色くなっているものがありました。植物の中には空気の流れに敏感なものがあります。水はしっかり担当を決めてあげているし、光もたっぷりになのに、植物に生気がない。
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ここはガーデンです。庭は手間をかけて育てるものです。竣工が完成でなく、建築家と大学と利用者が、知恵を絞って、改良を重ね、本当に心地よい「ものづくりの庭」を時間と手間をしっかりかけて、育てていくことを願います。

【関連リンク】神奈川工科大学KAIT工房の公式ウェブサイト
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text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-04-11 11:19
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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