藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
津村耕佑さんの個展で考えたこと
津村耕佑さんの個展 [夢神]がとてもよかったです。渋谷のNANZUKA UNDERGROUNDで、6/22までです。
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ゴブラン織(おそらく)などかなり重厚な生地で、フィギュアやらオブジェやら日用品やらを包んでいます。そこではシルエットとテクスチャーが激しくせめぎ合っています。クラシカルでゴージャスな織物が、ツルッとした質感であったはずのフィギュアを一変させます。テクスチャーというよりマチエールという言葉を使いたくなるほどの、表現主義絵画のような物質感があります。ほつれた糸が立ち上がっていたり、金箔を使っていたり……、包むものが包まれているもののシルエットを変えてしまう勢いです。しかし完全に輪郭を支配してしまうわけではありませ、何が包まれているか、だいたい想像できるのです。

この関係は衣服と身体の関係と似通っています。服が身体のシルエットがどんなに隠そうとしても、服は身体のシルエットから完全に離れてしまうことはできません。放射線防護服もコルセットも着る人の輪郭を変えますが、人体のシルエットから逃れているわけではありません。衣服は身体の輪郭やそれを着る人の所作を変えますが、身体を消し去ってしまうことはありません。そうした衣服デザインの問題意識が、展示されていたオブジェたちの底流に流れていると思いました。

ウルトラマンを包んでいる作品があります。考えてみれば、ウルトラマン自体が人体を包むことから生まれてきたヒーローです。着ぐるみですから。仮面ライダーも、ゴジラもキングギドラも衣裳でした。モビルスーツもスーツです。着ぐるみのテクスチャーはヒーローや怪獣たちのシルエットに大きな影響を与えます。

ウルトラマンのハイテク繊維のような質感はあのスラリとした体型を生みます。ゴジラのシルエットはゴワゴワなテクスチャーと切り離して考えられません。キングギドラの黄金の鱗もシルエットを左右する力があります。

モビルスーツは金属ですが、実際はプラモデルにすることが前提のロボットでしたから、樹脂の質感が入り交じっています。金属でもないプラスチックでもない素材感が、ガンダムに登場するモビルスーツのシルエットを生み出します。ガンダム自体は直線的で金属的ですが、ザクやゲルググの曲線のあるシルエットはかなりプラスチック的です。

こう考えると、津村さんの作品がフィギュアを包んでいることの意味が、とても深く思えてきます。しかも、テクスチャーとシルエットのせめぎ合いは、新たなカタチを生み出すだけではありません。新たな振る舞い(身体の動作)を生み出します。ほら、ヒーローや怪物たちは独特の動作をしましたよね。ドアラの魅力も動きです。

津村さんの作品は動きませんが、物質感と輪郭のせめぎ合いの緊迫は、それぞれの作品から立ち居振る舞いを生み出しています。夢神とはおそらく物神を意識したタイトルなのでしょう。たしかにここには、フェティッシュと片付けられないものがあります。夢神たちが創造の秘法に誘ってくれるのです。包むものと包まれるものの、テクスチャーとシルエットを巡るせめぎ合いが生み出す、カタチと所作の創造の奥義へと。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-06-06 13:30
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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