藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
21世紀人
遅ればせながら先週木曜日21_21デザインサイトへ「XXI c. ー21世紀人」展を見に行きました。7/6までです。

イサム・ノグチの水墨画「スタンディング・ヌード・ユース」の前で立ちつくしました。作品解説の紙の余白に模写までしました。(えらく下手なんで、お見せできません)。名建築に接してスケッチすることはたまにあります。美術館で絵画を模写したのは、学生時代以来です。それほど圧倒的だったんです、その存在感が。

21_21の第三回企画展。満を持しての三宅一生さんのディレクションです。前の2回の企画展に比べ、出展作家それぞれが存在感を競い合う構成になっていました。言い換えると出展作家それぞれの顔が見える。前2回はテーマとディレクターの印象に残っても、誰が出展していたか、プロフィールや顔まで含めて思い出すのが難しい展覧会でした。

「ものづくり」を変えなくてはいけない、という三宅一生さんの強い思いが館内隅々まで漲っていました。その思いの中心は、大がかりな三宅さんのインスタレーションでもなく、吹き抜けを支配する関口光太郎さんの生命の樹のような作品でもなく、明らかにイサム・ノグチの水墨画でした。この展覧会の臍です。臍から流れる響きにすべての作品が振るえていました。共振の箱をつくったのは三宅一生さんです。

水墨画はノグチが1930年に北京で描いた裸体像です。この時ノグチは画家、斉白石の指導を受け100点以上の裸体画を描いたと言われています。出展されていた一枚の絵は男性像です。一見、陰影の表現のように見える太い筆致の線は「気」の流れに呼応しているように思えます。この男の身体の中心は頭でも心臓でもなく、腹部です。肝臓、臍、腰にかけて極太の線がゆっくり流れ、そこから足の先や手や脳へ至ります。単純に気の流れを示す図を描いているわけではありません。それは一枚の紙に描かれた絵に、生命を与える線でもあります。見えないものを感じ取り、それを筆を持つ手の動きに自然と変換させて、人の命を絵に写し取る。ブルース・リー風に言えば「Don't think.Feel」な極意が、この絵には現れています。100枚以上描いた絵でもその境地に至ったのは、きっとごくわずかだったかもしれません。

見えないエネルギーを感じ取り、それを生きるためのエネルギーに変換させるエンジンこそ、未来のものづくりです。直観の力はアーティストの専売特許ではありません。見えないエネルギーの在処を直観的感じ取り、それを科学的に分析して、技術を開発する工学者もいます。

他に面白いと思った作品は、デュイ・セイドのコウゾの枝でつくった人体像。会場で対峙するノグチの作品と深く呼応し合っています。鈴木康広さんの「始まりの庭」も印象的です。結露を通して世界に循環する見えないエネルギーを私たちに感じさせてくれます。ただ惜しむらくは自然の力を見せる作品の背後に大きな循環機械と人工エネルギーが使われていること。作品で使われる不凍液を循環させているシステムまで、太陽光とか風力とかで発電するという徹底した態度が欲しかったと思います。

ほんと、いま何かを変えないと、人類に22世紀がやってこないと思います。僕の原点は、ドイツのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスなので、見えないエネルギーを引き出す人間の創造力が世界を変える原動力になることを信じてやみません。ノグチにしろボイスにしろ20世紀人が遺したメッセージを、21世紀人はきちんと受け取っているとは思えません。21世紀人は22世紀のためにいま何かを変えないと。

********

d0039955_11491257.jpg
会場内の撮影、見に来た人がブログとかmixiの日記で話題にしやすいように、たとえば吹き抜けにある作品だけでも撮れるようにしてもらえないかな、と、いつも思います。そのほうがアートとデザインを巡るさまざまな意見交換がしやすくなるはずです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-06-08 11:46
<< 櫻井圭記氏 公開特別講義 津村耕佑さんの個展で考えたこと >>


S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
以前の記事
カテゴリ
その他のジャンル
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2016 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。