藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
ブランディング講座
月曜日(6/9)、ある企業で「デザインから見たブランディング講座」と題した講演をしました。2時間弱しゃべりつづけましたが、受講者の方がただ話を聞くばかりだと退屈かもしれないと、手を動かしていただきました。紙と鉛筆をご用意ください。

さて、問題です、次の企業のロゴを描いてください。1) ナイキ 2) マクドナルド 3) NTT 4) フジテレビ 5) 森永製菓





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一番描ける方が多かったのはマクドナルド。ナイキとフジテレビも描ける方が多かったです。フジテレビのマークってヒゲ何本だっけ?と迷っている人がいました。この吉田カツさんによるマークは相当脳裏に焼き付くようです。

NTTのロゴは亀倉雄策デザインの名作です。ですが、NTTドコモのロゴを描く方がけっこういました。固定電話とケータイの、このところの存在感の差を表しているようでした。NTT自体がかなり影が薄くなっています。けれど、最近ドコモのロゴも、かなり存在感の薄いニュートラルなロゴに変わりました。本社より目立ち過ぎちゃいけないってことでしょうか。

森永製菓は、昔の逆立ちのエンゼルマークを描く方がいるかなと思いましたが、僕が見た限り、いらっしゃいませんでした。

企業名を言われてロゴをパッと思い出せることは、ブランディングに成功していること。──といったことを語りたかったのですが、どうも日本ではそうではないようです。不祥事が起こったときに、ロゴのイメージがにあまりに強いと、悪いイメージをずっと引きずってしまうことになる。雪印はまだ苦労していますし。森永は、グリコ森永事件を契機に、上向きの天使のロゴマークに変えました。しかし変えることで、伝統のロゴの記憶が薄れてしまった。

最近の企業ロゴデザインは、企業本体のロゴは影の薄いものにして、各製品ごとのブランディングに力を入れる傾向にあります。不祥事が起これば、企業全体、さらには同じマークや名前を使っている企業グループ全体に影響が及びますからイメージも集約させないで分散させる。吉兆とか三菱のことを考えればわかります。ロゴは薄めのほうが安心ってわけです。

サントリーとか新しいドコモとか、きれいなデザインです。が、影が薄い。文字だけのロゴのほうが、イメージを固定化させずに、何か起こったときにリスク回避・リスク分散になります。言ってみれば、リスク回避のための消極的ブランディング。今後もそうしたコーポレートアイデンティティが増えると思います。

けれど僕は、「やっぱりうちの企業の顔はこれ」と謳い、製品もサービスもひとつのロゴのもとに責任を持ちます、と語りかけるような、強気のブランディングに好感を持ちます。この会社のロゴ、描けますかと問われて、みんなが描けるくらいに強いロゴを持ってほしい。それが企業の責任だと思います。CSRを謳いながらリスク回避をしているブランディング戦略って、巧妙だと思いますが、何か違和感を感じます。

さて第二問です。「ヤクルトの容器を描いてください」。

講演ではこれも描いてもらいました。微妙な正確さを問わずに言えば、かなりの人が描けました。剣持勇デザインの容器がロゴ以上の力を持っているんですよね。ヤクルトのロゴを描いてくださいと言ってもおそらく描けない。コカコーラのガラス瓶以上の強さです。こんなデザイン他にあまりない。エコ対応になってもカタチは変えないでいただきたいです。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2008-06-14 19:41
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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