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藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
書店を歩いてみて
『デザインするな』の様子を見るため、最近時間があれば本屋めぐりをしています。雑誌の仕事をしていたときも、たまに書店を歩きましたが、基本的には校了すると、もう頭は次の号。販促は営業任せでした。

雑誌の場合は刷り部数が決まっていて、その中の何%が売れるかが勝負です。売り上げはデータで把握するもので、読者や書店の方と直接交流する機会はほとんどありませんでした。雑誌ライターになると、編集者から伝え聞く売れたか売れないかの話だけが頼り。社外秘であることが多く、正確な販売部数は教えてくれないません。読者からの反応も編集者を介して聞くことがほとんどでした。(自分の文章を読んでくれる人と交流したいというのは、このブログを立ち上げた動機のひとつでもあります)。

書籍の仕事をしてみて、書籍はギャンブル性が非常に高いビジネスだということを知りました。最初は、初版の数千部を売り切るか売り切らないかで闘って、負ければ消えてくし、売れればどんどん増刷されていく。そして、宝くじを当てるようなものだけど、ミリオンセラーになるものもある。

始まりは、書店の良い場所に置いてもらうこと、いろんなメディアに取り上げてもらうこと、といった地道な努力です。雑誌の仕事ばかりやっていると、その最初の肝心な部分のことを忘れてしまうんです。1冊1冊本を売る苦労は、正直言って、昨年12月のコミケで初めて味わいました。コミケ初出展では、200部刷って14冊しか売れなかった大惨敗。しかし学んだことは大きかった。本は売り場でまず手にとってもらえないと売れないという当たり前のこととか。

書いたら書きっぱなしでなく、編集したら編集しっぱなしでなく、本が読者の手元に行くまでをしっかり見届けることで、ギャンプルはさらに楽しくなるみたいです。自分がつくった波紋がどう大きくなっていくか、伝わらずに消えてしまっているか。消えていたら何故消えたか、どうしたら共鳴を呼び起こして伝わるか、を検証する。そこに楽しみがあるのです。

最近、雑誌の休刊が相次ぎ、雑誌ビジネスは厳しい局面を迎えています。雑誌の力が弱くなった原因のひとつに、雑誌編集者が「読者と手を結ぶ」ということを基本に無頓着になりすぎていることがあると思います。付録で読者と手を結ぶ雑誌づくりは、編集者自らの身を滅ぼします。

最近9割方、Amazonで本を買っていたので、書店を巡ることがなかったのですが、今回本を書くにあたって、売れている本を研究しました。

書籍が雑誌化しています。というより、雑誌以上に作りが軽いものがある。ビジネス本や処世術本では、見出しがあって、小見出しがあって、章の終わりには「まとめ」まである。一夜漬け用の参考書です。本文を読まなくても、読めてしまう。雑誌のエッセイをまとめた感じは、活字は大きいので、雑誌よりずっと読みやすい。

雑誌は重厚長大で持ち歩くのも不便。女性誌は女性のバッグの大きさのことなど考えておらず、広告の見栄えでサイズが決まっている。活字は小さく、しかも文章に練り込みが足らず、注目の人やブランドの固有名詞しか頭に入らない。それに対して、書籍はコンパクトで、読みやすく、ストーリーがしっかり読める作りになっています。

不況で広告が入りにくくなった昨今、出版社がギャンブル性の高い書籍に流れるのも分かる気がしましたし、読者が不便で重厚長大の雑誌から離れるのも分かる気がしました。

でも、僕は雑誌をつくりたい。いま雑誌に何が出来るかを考えるいい時期に来ていると思います。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-04-10 14:17
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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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