藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
上野伊三郎+リチ展
上野伊三郎+リチ展_d0039955_15134890.jpg
土曜日(4/11)、目黒区美術館の「上野伊三郎+リチ コレクション展〜ウィーンから京都へ、建築から工芸へ」(5/31まで)のオープニングレセプションに行ってきました。

僕は、上野伊三郎のことは、1933年ブルーノ・タウトが来日したとき、敦賀まで迎えに行って、京都に連れ、桂離宮を案内した建築家、ということしか知りませんでした。リチは上野の妻です。ヨーゼフ・ホフマンの主宰するウィーン工房でテキスタイルなど日用工芸品のデザインを手がけ、上野がヨーゼフ・ホフマンの建築事務所で働いていた頃に、二人は知り合ったようです。

いい展覧会です。でも、建築展だと思って行くと、いくぶん肩すかしをくらうでしょう。会場の主役はリチでした。
上野伊三郎+リチ展_d0039955_1519623.jpg
もちろん伊三郎の活動も概観できます。伊三郎の設計図面や建築写真(現存建築はほとんどないようです)や、彼が代表を務めた「インターナショナル建築会」の機関誌『インターナショナル建築』が展示されており、モダニズムの伝道者として足跡をしっかり辿れます。
上野伊三郎+リチ展_d0039955_15315670.jpg
上野リチによるテキスタイルのデザイン画の前で、、若い女性は「かわいい」と、年輩の女性は「ステキね」と会話してました。


僕を一番惹きつけたのはこの作品です。
上野伊三郎+リチ展_d0039955_1511842.jpg
村野藤吾設計の日生劇場の地下レストラン「アクトレス」のための壁面装飾(1963年)です。琳派と、中欧の民俗ファンタジーが、ウィーン分離派の精神の中で混じり合い、ひとつの調和ある世界を生み出しています。

もともとアルミ箔の銀色の襖紙。金色にしたのはお客さんのタバコの煙だったとか。
上野伊三郎+リチ展_d0039955_15115344.jpg
アントニン・レーモンドとノエミ・レーモンド。山脇巖と山脇道子、そして上野夫妻──。モダニズムの理想夫婦関係は「良妻、両才を並び立てる」ってところでしょうか。

上野伊三郎+リチ展_d0039955_15125851.jpg
展示品の中にちょっと気になるものがありました。1927年創刊の『デザイン』という雑誌。日本ではデザインという言葉は戦後急速に普及します。1930年代後半から1940年頃の『工芸ニュース』でチラホラ「デザイン」という言葉は見かけたことがあるのですが、日本で1920年代に「デザイン」という名の雑誌があったとは驚きでした。よほど生きのいい言葉に鼻が利く編集者だったのではないかと想像してしまいます。手にとって読んでみたい。ちょっとこれは調べてみなくては。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2009-04-12 15:38
<< 今年のペーパーショウ テオ・ヤンセン展 >>


S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

Twitterもやってます!

*当ブログの奥座敷
KoKo Annex

ライフログ
以前の記事
カテゴリ
その他のジャンル
ブログジャンル
リンクについて
当サイトはリンクフリーです。
お気軽にリンクして下さい。

本ブログの記事と写真の
無断複写・転載を固く禁じます。




Copyright 2005-2019 Keiichiro Fujisaki All rights reserved
本ブログの記事と写真の無断複写・転載を固く禁じます。