藤崎圭一郎のブログ。「デザインと言葉の関係」を考えます。

by cabanon
 
2007年 10月 06日 ( 1 )
text & photo by Keiichiro Fujisaki

 
レーモンド展&カバコフ展
神奈川県立近代美術館ツアーをしてきました。鎌倉でレーモンド展、葉山でイリヤ・カバコフ展。二館巡ると、一日がかりになってしまいますね。アントニン&ノエミ・レーモンド展(〜10/21まで)は、霊南坂の自邸の模型や、リーダーズダイジェスト東京支社の断面模型などをじっくり見ました。妻のノエミの家具やテキスタイルの仕事にもきちんとファーカスを当てているのはとてもいいことだと思いました。

レーモンドの良作はまだ残っているものが多いのでとにかく実作を見に行くことをおすすめしまます。笄町の自邸はもうありませんが、その設計を左右反転して公認コピーした井上房一郎邸(現・高崎哲学堂)は高崎の駅前にある。同じ高崎の群馬音楽センターは蛇腹の構造が実に斬新です。目黒のドレメの向かいの聖アンセルム教会は、素晴らしい空間です。あれここ東京だっけって思ってしまいます。東京女子大も一部取り壊されているけど、礼拝堂は美しく健在。星薬科大学、それに立教高校(ここは入るのに許可が要るけど)も……、ホントいい建物が残ってます。

レーモンド展へ行くのに先立ち、前日、自転車で世田谷の松陰神社の近くにある、東京聖十字教会へ行きました。こぢんまりした教会ですが、集成材の骨格で、箱舟を逆さにしたような大空間を作り出しています。外から見ると馬小屋をイメージしたようにも見える魅力的な建物です。
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葉山のイリヤ・カバコフ展は非常に良い展覧会でした。カバコフは巨大なインスタレーションで知られる現代美術作家ですが、今回は絵本原画展です。カバコフはソ連時代、.80年代末まで、挿絵画家として生計を立てていたのです。ソ連は厳しく芸術家たちの表現を統制しました。特に教育的な目的のある絵本の検閲は厳しく、カバコフにとって、ソ連時代の挿絵は、自分で描いたものだけれども、国家によって描かされたもの、という意識が強くあるようにです。イデオロギーから逃れられない内容であることは事実ですが、とにかくカバコフは絵がうまい! 

色彩感覚は絶品です。インクのモノクロ線画を見て、僕はレンブラントの銅版画を思い起こしました。どんな微細な線も生き生きしているのです。驚きでした。線が生きているというのは、どういうことか分かったような気がしました。跳ねているとか、エネルギッシュな線ということではないのです。どんなに描き込んだ絵でも、無駄な線が一本もない。線一本一本が全体を構成する重要な要素になっている。絵という生命(いのち)のために、線が生きているのです。

絵本やイラストレーションに携わる人、その世界に憧れる人は、必見の展覧会だと思います。もちろん現代美術作家、カバコフのルーツを知りたい人にも興味深い内容のはず。今日は土曜日なのに、会場はやや寂しかった。もっともっと人が入るべき展覧会だと思います。
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葉山の夕暮れの海に癒されました。波をかぶって足はビショビショになりましたが……。明日から熊野古道を歩きに行きます。更新はしばしお休みになります。
text & photo by Keiichiro Fujisaki

by cabanon | 2007-10-06 23:54


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Profile
藤崎圭一郎
Keiichiro Fujisaki
デザイン評論家。編集者。1963年生まれ。1990〜92年『デザインの現場』編集長を務める。1993年より独立。雑誌や新聞にデザイン、建築に関する記事を執筆。東京藝術大学美術学部デザイン科教授。

ライフワークは「デザインを言葉でいかに表現するか」「メディアプロトタイピング」「創造的覚醒」

著書に広告デザイン会社DRAFTの活動をまとめた『デザインするな』

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